交流会、ワークショップ、カンファレンス。人が集まる場を外に頼むとき、この九つに答えが出ていれば、誰に頼むにせよ要件定義がしやすくなります。
逆に、ここが空欄のまま相見積もりを取ると、各社が違うものの値段を出してきます。イベント会社はイベントを、制作会社は制作物を、広告代理店は広告を。悪気はなく、それが各社の商売だからです。
社内の合意も早くなります。私に頼まなくても使えるので、稟議にも、他の会社への発注前のヒアリングにも、そのままお使いください。
何がどうなったら、この事業は「勝ち」ですか。
最大の理想と、下回るとまずい最低ラインの両方を、言葉にしておきます。企画書の文言より、担当者としての本音のほうが役に立ちます。
重要なのは「イメージ」です。起こしたい光景を、ありありと描けるか。そのイベントが終わったあとに、誰がどんな表情で、何と話しているか。説明(explanation)ではなく、描写(description)として書いてみてください。
いちばん大きい動詞は何ですか。そして、小さいと決める動詞は。
「交流会」「勉強会」は集まりの種類であって、目的ではありません。目的は動詞で出てきます。よい集まりでは八つとも少しずつ起きているので、選ぶのではなく、それぞれに0〜5で強さを振ってみてください。
三つ以上を同じ大きさで置くと、講義は駆け足に、議論は尻切れになります。「これは小さくていい」と決めた動詞があると、当日やらないことが決まり、時間に余裕が生まれます。関係者それぞれに振ってもらえば、目的のずれがその場で見えるので、会議が一回減ります。
なぜ「いま」なのか。その話を、誰に聞いてほしいですか。
統計と課題認識の羅列ではなく、招かれた人が「自分に関係がある」と思える背景になっているか。そして、その話をいちばん聞いてほしいのは誰か。物語と相手は、一緒に決まります。語る相手の顔が浮かばないうちは、まだ物語になっていません。
「あったらマシなこと」と「必要なこと」は違います。その必要性が認識されると、そのイベントは集客や動員ではなく、参加への招待になります。その想いで、イベントの熱量はまったく変わります。
誰を招き、誰を招きませんか。
これは集客リストではありません。実現したいゴールのために、あなたが助けを求めたい人は誰でしょうか。名簿を眺める前に、三つの顔を思い浮かべてみてください。
人数も、ここで決まります。「採算上50人」と先に決めるのではなく、03で決めた物語と相手から逆算する。何人来たかより、誰が来たかのほうが、あとに残るものを決めます。すでに場をひらいている人を「一緒に立つ相手」にできれば、事業が終わったあとも動きが続きます。
この場のコンセプトを、一言で言うと何ですか。
たとえば「レストラン」と「バーベキュー」。どちらも人が集まって食べる場ですが、世界観が変わります。参加者が「お客さま」として来るのか、「創り手」として来るのかが変わります。たとえば、肉が焦げたことが事故になるのか、思い出になるのかまで、当日の体験の質を変えてしまいます。
用意されたものを受け取る。
持ってくるものは、とくにない。
持ち寄る。手を動かす。頼まれる。
失敗も、その場の一部になる。
04で決めた敷居は、ここで「参加の約束」として言葉になります。
何を「成果物」としますか。
人の関係性やマインドセットを扱う仕事だからこそ、何が成果なのか、それをどう記録して評価するかを、あらかじめ定義しておく必要があります。ここがないと、撮るべき写真や動画、報告書に何をどう書くかなどで、あとから混乱や「でっちあげ」が生じやすくなります。縦に「一人ひとり/全体」、横に「無形/有形」。この四つに分けて、それぞれ一行ずつ書いてみてください。
Framework by Chris Corrigan(ケン・ウィルバーの四象限にもとづく)
ここは、この9つの問いのうち少なくとも三つと連関している必要があります。01のゴール、03の背景・必要性、04の人選と規模が明確だと、カメラマンやライターも、どの瞬間に注意を向ければいいのかを事前に準備できます。報告書も、終わってから素材を探すのではなく、当日集めながら書けるようになります。
終わったあと、運営チーム自身は何を得ますか。
参加者の満足度が高くても、つくった側が疲弊して終われば、その事業は続きません。
ここを設計しておくと、来年の担い手が確保できます。毎年ゼロから人を探さなくてよくなる、というのがいちばん大きい効果です。
外に委ねる範囲は、どこからどこまでですか。予算と契約の形は。
人が集まる場をつくる仕事は、少なくとも六つに分かれます。ここが曖昧なままだと、あとから「当然やってくれると思っていた」「そこまでは含んでいなかった」が出てきます。持ち出しになった側は次から慎重になり、頼んだ側は物足りなさが残る。どちらも悪くないのに、関係だけが少し冷えます。
先に線を引いておくと、見積もりが比べられるようになるだけでなく、当日「これは誰の担当か」で止まることがなくなります。自分たちでやると決めた部分にも、ちゃんと人と時間を確保できます。
この集まりについて、私たちが疑っていない前提は何ですか。
基調講演は要る。100人は集めたい。去年と同じ形で。——長く続いた事業ほど、こうした前提が点検されないまま残ります。
オーバースペックな発注は、たいていこの棚から生まれます。前提をひとつ手放すだけで、予算にも時間にも余裕が生まれます。その余白を、いちばんやりたかったことに回せます。
この九つは、講座テキスト『人が集まる場をどう設計するか』の付録です。ひととおり答えを出してみて、埋まらないところがあれば、そこがいちばん話し甲斐のあるところだと思います。
一緒に埋めるところから、お手伝いすることもできます。
相談してみる→